血友病患者さんとご家族のための情報誌「ECHO」

血友病のそこが知りたい

血友病とこころ❶ 血友病患者さんにおけるメンタルケアのポイント(幼少期~青年期)

血友病とこころ(1)血友病患者さんにおけるメンタルケアのポイント(幼少期〜青年期)

荻窪病院 血液凝固科 臨床心理士 小島 賢一

 


 

近年、うつ病や自殺などメンタル関連の話題への関心が高まっています。そこで、血友病患者さんにおけるメンタルケアについて2回に分けてお話しいたします。
今回は血友病患者さんにおけるメンタルケアの基本的な考え方と、幼少期から青年期にみられる悩みやケアのポイントについてご紹介します。

メンタルに不調を感じたら、
無理をせず早めに主治医やカウンセラーに相談を

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新型コロナウイルス感染症が流行している昨今、面談をしていて血友病患者さんはやはり逆境に強いと感じています。昔はもちろん、今の子どもであっても行動を制限されたり、我慢させられたりした経験が非血友病の方よりも多いからかもしれません。友人と直接会えないことや、在宅時間が増えたことなどでストレスを溜めた方が多いなか、血友病患者さんは「閉じこもるのは平気です」「外で遊べないのは慣れています」と案外、涼しい顔で答えてくれました。血友病患者さんは病気と付き合う中でメンタル的にはタフになっているといえます。

 

しかしタフなだけに我慢しすぎて、症状となって現れるまでメンタルの不調に気づかない、あるいは症状が出てもストレスが原因だと気づかないケースも見られます。身体の変調と同様に、心の変調にも注意を向けましょう。メンタルの不調による影響は、成人であれば睡眠の質や食欲の増減、疲労感に現れやすいです。不調を感じたら早めに休息をとるようにしてください。症状が軽いうちは趣味や旅行などのリフレッシュも有効ですが、症状が重くなってくるとそれらも負担になることがあります。1つの基準として、これまで楽しかったことが楽しめないと感じたら、早めに主治医やカウンセラーに相談してください。

幼少期では、保護者の安心が子どもの安心に

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血友病患者さんの幼少期では、悩むのはもっぱら保護者です。「親に何ができるのか」「元気に育ってくれるのだろうか」「我が子の症状は他の子に比べて重いのか」「皮下・静脈注射の選択はどうしたらよいのか」といったことが悩みの中心になります。この時期の保護者は血友病への対応に不慣れなことも多いため、小さなことが不安の種になります。そこで、大きな支えになるのが、保護者仲間や病院スタッフの存在です。自分ひとりではなく、支え合う方々がいることが分かれば、安心につながります。そして保護者が安心すれば子どもも安心して育ちます。そのためにも、保護者同士のつながりを築ける患者会は大切です。

 

加えて、最近では保因者の症状も話題になっています。保因者にも血が止まりにくかったり、経血量が多いために貧血状態になったりすることにお悩みの方がいらっしゃるようです。お心当たりのある保護者の方は、主治医や血友病の拠点病院に一度ご相談されることをおすすめします。

青年期はついつい無理をしがちに

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青年期では部活や進学、就職、恋愛など、非血友病の方と変わらない悩みを抱えることが多くなります。最近では治療の進歩により、血友病であっても運動部で活動することができます。激しいコンタクト・スポーツはできれば避けてほしいですが、意外に影響するのが種目よりも部の「強さ」です。“強豪”とされる部では種目に関係なく練習の負担が大きい場合も多く、注意が必要です。なお、保護者や教師が規制をしても、多くの場合、子どもは納得しません。「主治医のストップがかかったら活動を休止する」ことを条件にして、とりあえずチャレンジさせてみてはいかがでしょうか。

 

また、青年期は病気となかなか向き合いづらく、筋力も覇気もあり、体調が問題になることは比較的少ないのですが、血友病が治ったわけではありません。腫れないからといって定期補充を疎かにすれば、やはり関節は痛みます。また、時として病気があることに劣等感をもち、それを補おうと部活や仕事に過度にこだわり、過剰に投与してしまう青年もいます。まずは輸注記録をつけて主治医に活動と投与のバランスをチェックしてもらいましょう。定期補充をして年間出血が0になっても、長期的に関節状態が悪化しているという調査報告もあるため注意が必要です。違和感を覚えたときはもちろん、何もなくても1~2年に1回程度は関節のレントゲンを撮って悪化していないことを確認してください。

血友病患者さんの特徴の1つに、繊細で真面目な方が多いことがあげられます。治療を怠ると出血や痛みが生じるため、これまで保護者や主治医の言いつけをきちんと守って育ってきたことや、注射で痛みを止めてもらった体験も関係しているかもしれません。学生時代の勉強への取り組み方には個人差がありますが、責任ある社会人になると、総じて課題に熱心で真摯に取り組み、周囲から信頼される存在になることが多いと感じています。その反面、失敗を気に病んだり、非血友病の方と同じように活動ができないことに引け目を感じたり、それを無理に補おうとして疲れ切ったり、さらにそれを隠そうとして無理を重ねてしまう方もいます。うつ病には至らなくても、一時的に軽度のうつ状態に陥る方は珍しくありません。対策としては、自分なりの楽しみを普段から見つけておくことや、いろいろな方との交流の場をもつことが有効です。また、楽しい思い出を作ることや、そうした体験を普段から思い出すこともストレスを和らげるのに役立ちます。

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次回は、社会人以降の血友病患者さんのメンタルケアについてご紹介します。