学校の先生方の心配ごと

  • 監修: 医療法人財団 荻窪病院 血液凝固科 部長 萩原 剛 先生 臨床心理士 小島 賢一 先生

血友病の子どもたちの学校生活の現状

血友病の子どもたちは、近年の血友病治療の進歩により、制限の少ない学校生活が送れるようになってきています。

子どもの学校・保育園欠席状況と学校行事・体育への参加状況

全国の血友病患者さんを対象とした生活の質(Quality of Life:QOL)に関する令和2年度のアンケート調査の結果をみると、18歳未満の子ども(有効回答数86人)の82.6%は学校・保育園に欠席することなく通えており、97.7%は学校行事にも制限がなく参加していることがわかります(図1,2)。また、体育の授業全てに参加している子どもは過半数を超えており(61%)、軽度の運動競技のみの参加や全てを見学する子どもはいずれも減っています(図3)。

図1:出血による学校・保育園の欠席日数
図1:出血による学校・保育園の欠席日数のグラフ
■図2:1年間で医師より制限を受けた学校行事参加の頻度
図2:1年間で医師より制限を受けた学校行事参加の頻度のグラフ
■図3:体育の授業はどうしていますか
図3:体育の授業はどうしていますかのグラフ

学校で出血したときの対応

近年では、学校内で子ども自身や保護者が、 注射を行うことが多くなっています(図4)。 出血に合わせた対処をを参考に、子ども自身が注射(自己注射) をできるのか、それとも保護者や病院に連絡が必要かなど、事前に保護者と出血時の対応方法を決めておくとよいでしょう。

■図4:学校で出血したら止血治療はどうしていますか
図4:学校で出血したら止血治療はどうしていますか

図中の略語は左から『すぐ自己注射』『すぐ親が注射』『早退し家庭注射』『早退し医療機関で注射』『帰宅後家庭注射』『帰宅後医療機関で注射』を意味する。

子どもの学校生活、友達関係

血友病治療の進歩により、制限のない学校生活が送れるようになり、先生方の血友病に対する理解も進んでいるようです(図5)。また、友達について質問したところ、友達に病気を理解してもらっているか、どうかにかかわりなく、良い友人関係を築いている様子がみてとれます(表1)。

■図5:担任の先生はあなたの病気を理解してくれていますか
図5:担任の先生はあなたの病気を理解してくれていますか
■表1:友達はあなたの病気を理解していますか、友達に恵まれていますか
表1:友達はあなたの病気を理解していますか、友達に恵まれていますか

(N=20:保護者回答ではなく、本人回答例)

  • 対象・方法:全国の医療施設・患者組織を介して通知した全国の血友病患者を対象に、インターネットを利用したアンケート形式で調査。令和2年4月11日から9月末までの調査期間中に回答が得られた431件のうち、検討対象として不適格と判断した回答を除いた396件を解析した。

(図1 ~5、表1の出典:竹谷英之, 血友病QOL 調査委員会. 厚生労働省行政推進調査事業「非加熱血液凝固因子製剤によるHIV感染血友病等患者の長期療養体制の構築に関する患者参加型研究」分担研究.「 血友病患者のQOLに関する研究」令和2年度調査報告書.)

Attention

他の子どもやその保護者らに病気の説明をするときは

学校内では常に担当の先生が血友病の子どもだけに注意を向けられるわけではありません。事故が発生しやすいのは授業中よりも休み時間や掃除の時間などが多いこと、欠席や体育の授業の見学中が多いことなどを考えると、周囲の子どもたちに病気への理解があると心強いでしょう。高校生くらいになれば、周囲の友人たちも精神的に大人になって支えてくれるようになります。しかし、特に年少者では配慮ができないこともあるので、同級生に伝える場合は慎重に考える必要があります。本人の状態と気持ちを尊重し、周囲の子どもたちの年齢、理解力、クラスの雰囲気なども考慮した上で、個別に対処するようにしましょう。

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もし、本人や保護者が病気のことを周囲に知られたくないと考えている場合、同級生に対しては「体が弱い」「関節を痛めていて足が悪い」「ケガが治りにくい体質」「血が止まりにくい体質」など、簡単な説明をしておくことで対応できることも多いでしょう。一方、子どもたちから断片的な情報だけを伝えられた親が誤解するリスクも生じます。保護者の考え方や信念、本人の気持ちも考慮して、慎重に対応してください。

■子どもの成⻑段階によって異なる不安(荻窪病院勉強会事前アンケートより)

担当する子どもの成⻑段階によって不安要素が変化することも示されました。

幼児期・小学生期の不安 中学生期・高校生期の不安
  • 動きが活発になりケガをさせないようにするには?
  • どんな遊び、動きがいけないのか?
  • 親へどこまで報告するのか?
  • 校外学習時の具体的な準備
  • 部活、体育の授業への参加
  • 思春期になり対応が難しい

知識を得ることで不安が軽減

勉強会参加後には、下表に示すような感想が寄せられ、参加した先生方の約9割が「不安が軽減した」「血友病という病気や対処法について理解できた」と回答しています。

■勉強会参加後の感想(荻窪病院勉強会事後アンケートより)

ケガの対処 生活の注意点
  • 出血時の対応がわかった
  • 自信を持って対応できそう
  • いざという時の対応がわかった
  • 具体的に理解できた
  • 神経質にならなくてもいいと思った
  • ふつうの対応でいいとわかった
  • 血友病について意識が変わった