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小さな血友病の子どもさんを持つご家族へ

2.乳幼児期の出血の特徴

血友病が生まれてすぐに見つかることは少なく、多くは赤ちゃんが寝返りや這い這いを始める生後6ヵ月以降頃になり出血に気づかれます。乳児期に見られる主な出血は、転んだりぶつけた後に起こる皮下出血(青あざ)口の中の出血で、時には採血の後の止血が悪くて気がつかれることもあります。また、頭蓋内出血が比較的多く、ぶつけたり、転落などの明らかな原因がないこともあります。

 

幼児期になると活動量が増えるため、切りきずからの出血や打撲後の皮下出血に加え、関節や筋肉への出血も見られるようになります。関節内出血の中では足首膝の出血が他の関節に比べて多く見られます。その他には鼻出血を繰り返すこともあります(図8)。

図8乳幼児期に見られる主な出血部位

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1. 皮下出血

1歳前後のお子さんは身体に比べて頭が大きく、また運動機能が未熟なため、つかまり立ちやひとり歩きの時にバランスが上手にとれません。その結果、しりもちをついたり、転んで、テーブルや家具などにぶつかり皮下出血を起こします。ぶつけやすいのは顔、むこうずね、腕、おしりなどで紫色の出血斑(紫斑)がたびたび見られます。額をぶつけた場合には皮下にもれた血液が目の周りに下がってくることがあり、周囲の大人がびっくりすることがあります。
 

2.口腔内出血

生後5~6ヵ月になると歯が生えてきます。ちょうどこの頃お座り、這い這い、つかまり立ち、さらにはよちよち歩きが始まりますので、転んだりぶつけて口の中を切ることがあります。また、1歳前後は何でも口の中に入れたがる時期でもあり、お箸やペンなどで口の中を突いて傷を作ったりすることがあります。口の中はもともと血の塊りを溶かす働き(線溶活性といいます)が強いので、出血した場所と程度によってはジワジワと何日も出血が続く場合があります。
 

3. 頭蓋内出血

乳幼児は大人と違って自分から頭の外傷や打撲をはっきり訴えることはありません。そのせいもあって小さなお子さん、特に乳児に起こる頭蓋内出血の多くは明らかな誘因のない出血といわれています。

乳児の場合、頭蓋内出血を起こすと、発熱、不機嫌、嘔吐、なんとなく元気がないなどの症状が現れますが、言葉で伝えることができないため風邪と間違われたりして、発見が遅れることがあります。幼児~学童では頭を打った直後には特に変わりなく、数日後に頭痛や嘔気、嘔吐、さらに進行すると意識障害、麻痺やけいれんを起こすこともあります。頭蓋内出血は対応が遅れると生命の危機にかかわる重篤な出血ですが、速やかに充分な量の製剤を補充すると多くは後遺症を残さずに治すことができますので、疑いがある時には早めに病院にかかりましょう。
 

4. 関節内出血

幼児期に入ると運動能力が発達し、活動が活発になるので高いところから飛び降りたり、飛び跳ねたりすることで膝や足首の関節に出血が見られるようになります。また、特に誘因なく関節に出血が起こることもあります。関節に出血が起こると関節部分の痛み、腫れ、熱感、あるいは関節を動かせないという症状が現れます。動きが不自然、使いたがらない、かばう、触ると痛がる、左右の大きさが違うことなどで本人が訴えなくてもわかりますので注意深く動作を観察しましょう。関節内出血の場合は製剤を注射する必要があります。
 

5. 筋肉内出血

筋肉内出血はふくらはぎや、太もも、おしり、腕などに起こります。皮下出血と見分けるのが難しいことがありますが、出血した部分に熱を持っている、腫れている、痛がる、動かさない、不自然な体位や歩き方をする場合などの症状がある時には、筋肉の中に出血を起こしている可能性があります。
 

6. 鼻出血

鼻いじりや鼻炎で鼻腔(鼻の穴)に出血をすることがあります。表面に見える出血なので初めはびっくりしますが、慌てず、圧迫止血をすれば止血しますので特別な場合以外には注射の必要はありません。

 

7. 吐血・血便

吐血は血液がまざったものあるいは血液そのものを吐くことです。胃や食道など上腹部の消化管に出血した時に見られるものです。一方、血便は、食道や胃、腸の出血の場合に見られます。真っ黒い便や赤黒い血液がまざった便が出た場合は胃や腸のどこかに出血が起こっている可能性があります。乳幼児の血便の原因として比較的多いのは細菌性腸炎と腸重積ですが、いずれにしても吐血と血便は緊急性を要し、病院にかかる必要があります。なお、便が硬くて肛門が切れた際に、便に血がつくことがありますが、これは心配ありませんので、普段通りにおしりをきれいに拭いて下さい。ただ、便が硬くて、同じところから出血を繰り返す場合は、便秘の治療を主治医に相談しましょう。