患者さん・ご家族へ
小さな血友病の子どもさんを持つご家族へ
1.血友病とその治療
(4)血友病の症状
血友病は止血に必要な第VIII(IX)因子が不足している病気です。その結果、身体の色々なところに出血が見られるようになりますが、出血しやすい部位は成長とともに変わっていきます(図6)。
まず、新生児期ですが、血友病が新生児期に見つかることはまれで1割未満です。したがって、新生児期は病気に気づかないまま経過することが多く、その後、這い這い、つかまり立ち、一人歩きと動きが活発になるにつれて、皮下出血(青あざ)が目立つようになります。時にはぶつけておでこにこぶを作ったり、あるいは病院での採血の際に出血が止まりにくいことで気づくこともあります。幼児期になってさらに動きが激しくなると、関節内や筋肉内への出血が増えていきます。欧米の報告を見ますと、肘、膝、足首の順に多いといわれてきましたが、私たちの観察では一番多いのは足首の出血で、次いで膝、肘の関節です。その他に鼻出血や歯ぐきの出血なども見られますが、特に大事なのは関節内出血と頭蓋内出血の管理です。関節内出血の止血処置が遅れると出血を繰り返すうちに関節の動きが次第に悪くなり、慢性的な腫れや痛みも加わって日常生活に支障を来たすようになります。頭蓋内出血も対応が遅れると命にかかわる出血で充分に注意する必要がありますが、早めに治療することにより、血友病のお子さんが頭蓋内出血で亡くなったり、障害を残したりすることはほとんどなくなりました。私たちの施設でも20年間に何人か頭蓋内出血を起こしましたが、障害を残したのは生後6ヵ月以内に出血した1人だけですので、頭蓋内出血のことを心配してお子さんの活動を過度に制限するのは好ましくないと考えています。
なお、今までに述べた症状は重症血友病の患者さんの症状です。中等症あるいは軽症の血友病患者さんの出血症状はこれよりずっと軽くて、年長児や成人に達してから大きなけがや手術などで発見されることもまれではありません。特に、関節内出血が少ないことが特徴です。
図6定期(予防)的補充療法をしていない血友病患者さんの出血症状の年齢による変化.
