患者さん・ご家族へ
小さな血友病の子どもさんを持つご家族へ
はじめに
ひと昔前に比べて、質の高い血液凝固因子製剤が登場したことによって、血友病患者さんの止血管理は容易になり、適切な補充療法を行えば健常者とほとんど変わらない日常生活を送ることが可能になりました。
しかしながら、初めて血友病の子どもさんを持つご家族の悩みは図りしれないもので、また、幼い子どもは血友病でなくとも日々心配の絶えない存在です。そこで、ご家族が抱えておられる問題を少しでも解消し、よりよいケアを行って頂くための参考になればと本書を企画致しました。
最近では、他の遺伝病に先駆けて血友病の遺伝子治療の研究が進んでいます。恐らく、今生まれた患者さんが成人になるまでには血友病が遺伝子治療で完治する時代が来るでしょう。
ただし、遺伝子治療で血友病が完治しても、それまでに起こってしまった関節障害をもとに戻すことはできません。小さな血友病の子どもさんを持つご家族に望みたいことは、血友病が完治する時代を控えて、関節を悪くしたり、障害を残すようなことがないようにお子さんを守ってあげて欲しいこと、それと同時に主治医と連絡を取りながら、お子さんを伸び伸びと育てて欲しいことです。
なお、本書は2000年11月に作成の同タイトルの小冊子に加筆を行い第2版としたものです。
本書が血友病の子どもたちの明るい将来への一助となれば、血友病の医療に携わる者の一人として、大変うれしく思います。
産業医科大学 名誉教授 白幡 聡