節目のケアシリーズ
《こんな時、どうしたらいい?》青年期編
ひとり暮らしを始める息子が心配
血友病Aの息子が大学進学で春から遠方でひとり暮らしを始めます。 親元から初めて離れるので病気のことがとても心配です。どんなことを準備しておけばよいでしょうか?
主に(1)血友病診療施設の確保、(2)医療保険変更の手続き、(3)自己注射の習得などのセルフケアが整っていること、が挙げられます。具体的にご紹介しましょう。
まず、転居先で血友病を診てくれる医療施設の確保については、現在血友病の治療を受けておられる病院の主治医に相談し、これまでの治療経過などを書いた紹介状を用意してもらいます。長い治療経過の場合には紹介状を書くのに時間がかかる場合もありますので転居先が決まったら早めに相談したほうが良いでしょう。お子さんが自己注射ができない場合には特に診療施設の確保は大事です。
医療保険についても必要な手続きを取っておきましょう。血友病患者さんで未成年の方の場合は基本的に保護者が加入している医療保険(主保険)と、特定疾病療養受療証、小児慢性特定疾病医療費助成制度(20歳を越えている場合には、先天性血液凝固因子障害等治療研究事業)の医療助成制度で医療費の負担が免除されていますが、お子さんが転居される場合には、主保険の遠隔地健康保険証をその医療保険を取り扱っている窓口で作り、お子さんに持たせるようにします。また、小児慢性特定疾病医療費助成制度の医療証は転居地の病院で変更や追加の手続きをとる必要があります。詳しくは「血友病患者さんのための医療福祉ガイドブック(発行:バイエル薬品)」などをご参照ください。
通院する病院の確保、必要な医療保険の手続きが完了すると、後は、ご本人がご自身のことをどの程度ケアできるかということになりますね。特に、慣れないひとり暮らしでの突然の出血はやはり心配です。自己注射をすでに行なっていて、止血管理をご本人が適切にできれば、大きな問題はなさそうですが、もし、まだ始めていないなら、ぜひ転居する前にかかりつけの病院で自己注射を習得することをお勧めします。また、血友病という病気についてこれまでご両親任せでお子さんがあまり理解していない場合にはこの機会に勉強するようにアドバイスをしてあげてください。その時に役立つ情報が凝固因子製剤の販売会社などのホームページにも掲載されています。
なお、使用している製剤を転居先の病院ですぐに充分確保できない場合もありますので、念のため、現在の病院で(例えばひと月分の)製剤を処方してもらい持たせておけば安心です。輸注の方法なども今の主治医と相談しながら、例えば出血しやすい関節などがある場合は、生活に慣れるまで定期投与にするといった対策の検討も良いと思います。
私たちの血友病センターの患者さんの中には、交通事故などの万が一の事態に備えて、血友病について簡単に書き記した名刺大のカードを免許証や学生証とともに携行している方もおられます。内容は、氏名、病名、因子活性の値(重症度)、インヒビターの有無、使用している製剤名、かかっている病院の連絡先などが書き込まれていれば充分でしょう。
学校が忙しくなると、製剤を取りに病院の行くのが精一杯になると思いますが、関節症の評価や定期的な血液検査は夏休みなどを利用して必ず受けるようにしましょう。