節目のケアシリーズ
《こんな時、どうしたらいい?》思春期編
クラブ活動の限界と病気の受け入れ
息子は中学でバスケットボール部に入部し、自己注射を習得して、がんばってきました。冬休みに整形外科を受診した時、足関節の血友病性関節症が少し進行していることがわかりました。医師からは、このままクラブ活動を続けることは勧められないと言われましたが、本人が楽しんでいる姿を見ると、止めるようにはっきり言えず、関節症の進行への不安が募ります。
好きなスポーツを続けさせてあげたいという希望と、血友病性関節症を進行させてはいけないと心配される親御さんのお気持ちは複雑ですね。好きなことに打ち込んでいる姿を身近に見ているご家族だけに「バスケットを止めなさい」とはなかなか言いにくいことでしょう。優れた凝固因子製剤の開発による治療の進歩、医療費の免除などによって血友病の患者さんのQOLはめざましく改善されてきましたが、やはり、関節の状態やスポーツの種目、練習量によっては限界があることも事実です。
1.子どもさんの理解度の現状把握
ご本人は中学生で、自己注射を習っておられるということなので、自分の病気についてはある程度理解できているものと思います。彼らは教師やクラスメイト、部員との対人関係などから周囲の自分への対応が小学生の頃と比べて色々な点で変わってきたことを肌で感じています。その結果、以前のような手厚い保護が薄れ自由になった反面、自分の責任を親御さんの知らないところで感じたり、経験して、自分の身の処し方はいちいち親に口にせずとも子どもたちそれぞれが持っているのではないかと思います。
2.改めて本人が血友病と向き合うために
今回のことを機会に、改めて血友病を彼の問題としてとらえ、彼を中心にケアを進めていくよう環境を調整してみてはどうでしょうか。特に、本人の意思決定にかかわるようなことは、ご本人も同席の上、子どもにもわかりやすく説明してもらえるように親が意識して行動することが大切です。例えば、前回の検査結果を親御さんが正確に伝えることが困難であれば、そのことを担当の医師に伝えて、近いうち(例えば春休みなど)に再度受診して、検査結果の説明を一緒に受け、あわせて今後の学校生活について話し合うのが良いと思います。担当の医師と本人が、病気や学校生活について直接話し合うことで、改めて血友病と向き合い、病気である自分の限界について考えたり、どこかで折り合いをつけることに気づくかもしれません。
3.そして血友病を受け入れていくために
子どもの成長には多面的なサポートが必要ですが、血友病のお子さんの場合、健康な子どもに比べて医療面でのかかわりがどうしても多くなります。病気である自分の生き方を決める時に「医療」と能動的にかかわってゆくことが病気の受け入れに繋がるのではないかと考えます。 関節の状態の説明を受けてあっさり気持ちを切り替えクラブ活動を止める子もいれば、別のスポーツではどうかと相談してくる子もいますし、このままクラブ活動を続けるにはどうすればよいか尋ねるお子さんもいます。中には多少関節が悪くなってもいいのでバスケットボールを続けたいと希望する子もいると思います。患者さん本人のこういった個々の希望について医師に対策を一緒に考えてもらったり、アドバイスを受けて希望にできるだけ近い状況を探す過程で病気を受け入れていくこともあるでしょう。 また、大人がいくら「こうしたほうが良い」と言っても、そんなふうに考えることができない時期もあります。「医療の立場」から言えることを彼自身が自分で消化して結論を出す作業を見守る姿勢も周囲の大人に必要なことでしょう。このことは、血友病と付き合いながら生きてゆく彼らの人生の中で繰り返される経験であると思います。