節目のケアシリーズ
《こんな時、どうしたらいい?》思春期編
自己注射のフォローアップ
中学生の息子は自己注射の練習を地元の病院の紹介で、遠方の大きな病院で受けました。家庭での自己注射はうまくいっており、病院へは製剤をもらうだけになって主治医と会う機会も減っています。便利になった反面、このままで良いのかと少し心配です。
血友病患者さんやご家族に安全で効果的な家庭療法を行っていただくために、2003年8月に日本血栓止血学会・血友病標準化検討部会から「血友病在宅自己注射療法の基本ガイドライン」が発表されました
(https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsth/14/4/14_4_350/_article/-char/ja/ )。それまでにもマニュアルやガイドラインがありましたが、この新しいガイドラインの特色のひとつに家庭療法(自己注射のこと)導入後の継続・管理という項目があり、これは従来のガイドラインにはなかった項目です。ここには家庭療法が適切に行われているかどうかを医療機関で評価してもらいながら進めてゆくことが大切で、我々医療従事者と、患者さん・ご家族がそのために認識しなくてはならないことが説明されています。家庭療法は血友病の患者さんやご家族にとってとても大切で有益な治療法ですので、安全で効果的に続けていけるように心がけましょう。自己注射を習った病院で説明を受けたかもしれませんが、もう一度おさらいをしてみましょう。
《患者さん・ご家族が守らなければいけないこと》
1.定期的に受診すること
調子がよくても患者さん本人が3 ヶ月に1 度くらいの間隔で受診して、主治医に自己注射や生活の状況を知らせます。
どうしても学校を休めない時には夏休みなど長期の休みに受診して下さい。その時に次回の受診予定を主治医と話し合っておくとよいでしょう。
2.家庭治療に関して主治医の評価と指導を受けること
出血症状や身体の成長(体重増加)などにより、それまで行っていた輸注の間隔や投与量を変える必要があるかもしれません。
3.治療経過や製剤の家庭内在庫状況を記録し、病院に定期的に提出すること
輸注記録はつけていますか?
もし記録表がなければ、主治医にお問合せ下さい。
4.製剤は決められた方法で保管し、輸注方法や輸注量は主治医の指示を守ること
室温保存可能な製剤でも夏場は部屋の温度が上昇しますので、その時には冷蔵庫で保管します。うっかりして高温な環境に放置しないようくれぐれも注意しましょう。凝固因子製剤は高価な薬ですから、有効期限が近いものから使用して下さい。
5.製剤や注射器などの物品を兄弟を含む患者間で流用しないこと
6.針や注射器など医療廃棄物を適切に処理すること
使用済みの物品は、製剤をもらった医療機関の指示に従って処理します。特に、針や注射器は絶対に家庭ごみ回収に捨てないで下さい。
7.出血症状が重篤な時や判断に迷う時には主治医に連絡すること
重篤な出血が疑われる時や出血部位が広範囲で製剤の投与量が判断できない、1 回の輸注では十分に止血できなかったり、最近、製剤の効き目がなくなっているような印象がある場合などは主治医に相談します。家庭療法を許可されているということは、決して治療のすべてを任されているのではありません。「迷った時には主治医に相談」が鉄則です。
いかがですか?注射の技術は問題なくても、以上のようなことができていなければ正しい家庭治療ができているとはいえません。一度、お子さんや主治医と話し合ってみるのもよいと思います。
我々の血友病センターでは、患者さんやご家族が家庭療法を開始された場合には約半年後に注射の方法や基本的な知識の再評価を行って、安全で効果的な家庭治療が行われているかをチェックしています。医療従事者からの「大丈夫だね」とか「こうすればいいよ」といったアドバイスがあれば安心ですよね。
![[引用・参考文献] [引用・参考文献]](/sites/g/files/vrxlpx13776/files/2021-01/adolescence_03.gif)