節目のケアシリーズ
《こんな時、どうしたらいい?》思春期編
海外渡航時の製剤の携行方法
1週間ほど海外旅行に行く予定ですが、製剤を持って行く場合の注意点などを教えて下さい。
血友病の方が海外旅行に出かける場合の注意点については、以前にもご紹介したことがあります(参照: 節目のケアシリーズ思春期編 初めての海外旅行)が、2007年3月から国際線の航空機内への液体持込み制限が厳しくなっていますので、今回は、この点を含めご紹介したいと思います
1.凝固因子製剤のほか、日常使用している医薬品は自分で用意しておくこと
海外でけがや病気で医療機関にかかると日本の医療保険は使えませんので、全額自己負担となります。任意で民間の海外旅行保険に加入し、ある程度の保険金を受け取ることはできますが、海外でその国の病院へかかることは言葉の壁や医療システムの違いなどから、容易なことではありません。特にみなさんが使っている凝固因子製剤は日本と同様、限られた医療機関でしか取り扱っておらず、同じ製剤がその国で使われているかどうかわからない場合もあります。海外へ行く場合には、いつも使用している製剤は必ず必要な量を持参しましょう。また、鎮痛薬や湿布薬、常用の内服薬などもあらかじめ用意して行きましょう。
2.出入国に際しての準備をしっかりしておくこと
2007年3月1日から、国際民間航空機関が保安措置として、液体物の機内持込みの禁止(制限の強化)を実施しています。これによると、手荷物として機内に持ち込める液体物は、下記のとおりです。
- 液体物1つ当たりを100mL以下の容器に入れ、容量が1リットル以下の再封可能な無色透明のプラスチック袋(いわゆるジッパー付)にまとめ、1人1袋まで持ち込めます。
※液体以外に液体物とみなされる物:ジェル類、歯磨きペースト、半液体状物(容器に入れなければ形状を保てない物)、クリーム類、エアゾール類など - 医薬品、医療上必要な液体、乳幼児のミルクやジェル状のベビーフードなどは、検査員に申告の上、手荷物として持ち込めます。
つまり、凝固因子製剤と溶解液は②の例外的措置で持ち込むことができます。ただし、機内において必要であることの証明が求められますので、主治医から製剤の携帯の必要性を証明する文書や診断書(英語)など(例:図1)を書いてもらい、求められればいつでも提示できるよう用意しておいて下さい。
製剤を手荷物にするか、スーツケースに入れて貨物として運ぶかという選択で、注意しなければならないこととして、目的地に本人は到着しても、荷物が手違いでどこかに紛れ、数日して手元に届くことが稀にあります。携行する製剤の本数にもよりますが、安全のためには手荷物として持ち込むほうが無難と考えられます。滞在期間が長く、製剤をたくさん携行する場合は、例えば、3~4日分を手荷物として持ち込み、それ以外はスーツケースに入れる方法もあります。なお、貨物室は客室より温度が低くなりますが、外気のように氷点下になることはなく凍結の心配はないそうです。スーツケースに入れる場合、割れないように保護を施し、スーツケースの中央部分に製剤がくるよう梱包します。
なお、航空機内への液体持込み制限についての最新情報は、国土交通省のホームページ
(http://www.mlit.go.jp/koku/03_information/index.html) をご覧下さい。また、各航空会社の対応については、利用航空会社のホームページにて確認するか直接お問い合わせ下さい 。
3.もしもの時にあると助かるもの:緊急カード
万が一の事故などに備えて、図2のような緊急カードや医師の診断書を用意しておくことをお勧めします。
4.使用した製剤や注射器などは持ち帰ること
現地で使用した注射針(蓋ができる小さなプラスチック容器などに入れ)や空瓶、シリンジなどはまとめて持ち帰り、医療機関に返却して下さい。
5.自己注射や家庭輸注をされていない方へ
海外や国内の遠方への旅行には、自己注射(あるいは家庭輸注)ができるようになっているほうが、はるかに安全で安心、行動範囲も広がります。いつか海外にと思っておられる方は、自己注射(家庭輸注)を習得されることをお勧めします。
図1 入国審査等で困ったときに出す手紙(例)
1-1 ISEIGAOKA, YAHATANISHI KU, KITAKYUSHU JAPAN, 807-8555
Phone:+81-93○○○
Dear Sir,
This patient, Mr.○○○○, is suffering from hemophilia A which is a congenital bleeding disorder.
He brings factor(○) concentrates(○○○○), syringes, needles and so on with him for self-infusions.
For medical reasons, I would like to ask you to allow him to carry them with him in your country.
Sincerely yours,
(signature)
AKIRA SHIRAHATA M.D.
Department of Pediatrics, School of Medicine,
University of Occupational and Environmental Health Japan
図2 パスポートに挟む緊急カード(例)(必要事項は患者さん自身が記入しておく)
Emergency Medical
Infomation
(name)
has a
Bleeding Disorder.
Bleeding may not be obvious.
Please evaluate and
treat immediately !
(表)
Bleeding disorder
Severity Level
Recommended treatment product
Drug allergies
※No aspirin or aspirin
containing products.
Other important information
Date of birth
Weight (in Kg)
(裏)