節目のケアシリーズ
《こんな時、どうしたらいい?》思春期編
初めての海外旅行
高校の修学旅行が海外旅行になりました。
初めての海外旅行です。行かせてもよいでしょうか?
近年、海外旅行は、私たちの身近なものになり、多くの人が海外旅行を楽しんでいます。血友病の患者さんも、高濃度で純度の高い凝固因子製剤をおおいに活用して、海外旅行を楽しんで欲しいと思います。私たちの血友病センターにかかっている高校生の患者さんも海外への修学旅行が年々増えつつあり、同様の相談がよせられるようになりました。私たちは事情が許すかぎり、海外旅行に積極的に参加することを奨めています。親御さんにとっては、お子さんが帰られるまで、無事に旅行しているのかご心配のようですが、帰国した時のお子さんの満足げな表情を見ると、旅行に出して良かったと大きな喜びを抱かれるようです。「親子ともども成長したようです」という感想が聞かれます。親元から遠く離れて止血管理をしながら慣れない土地で過ごすことは、大変なことであると同時に貴重な体験でもあると思います。
さて、血友病患者さんの場合、初めての海外旅行を安全に楽しくするためには計画と準備をしっかり練っておくことが大切です。ここでは、私たちの血友病センターでの方法をご紹介しながらいくつかのポイントをお示しします。
まず、前提として、学校関係者に前もって血友病であることを告げておくことが望ましいでしょう。そして、患者さんは自己注射ができるようにしておくこと。自己注射を習っても日頃、お母さんやお父さんにしてもらっている人は旅行前におさらいの意味も含めて自分で注射をするようにしておきましょう。
1. 詳細なスケジュールの検討
学校から、旅行スケジュールが知らされたら、まず、主治医に相談します。主治医との相談のなかで、旅行スケジュールに合わせて、いつ、何単位、輸注するかということがわかってきます。自宅以外で輸注をするのはプライバシーが守られにくく、大変気を遣うところです。特に修学旅行のように団体行動ではスケジュールが過密だったり、宿泊が個室でなかったりで日頃よりナーバスになりやすいでしょう。事前に担任や付き添いの学校関係者と相談をして、先生方の部屋等で輸注させてもらうなど周囲の理解や配慮があると安心です。可能なら主治医と学校関係者と保護者とで一度打ち合わせをしておくとより安心でしょう。
2. 渡航先で困らないために
私たちは、万が一の場合を考えて渡航先の血友病センターや、血友病を診てくれる医師がいる病院をWFH(世界血友病連盟)のガイドや、製薬会社に問い合わせをして調べておきます。出発日が近づいてきたら、念のため、患者さんが携行する下記のような書類を作成し、空港での手荷物検査、万が一の事故やとっさに言葉が出ない場合も困らないように備えます。
3. 製剤のパッキング(荷造り)のポイント
凝固因子製剤を病院から持ち帰ったら、外箱や実際に使わない道具は省き、必要最小限にまとめます。通常、スーツケースのような大きな荷物は飛行機の客室には持ち込めませんので、手荷物のバックの中に製剤や道具をコンパクトに詰めましょう。そうしておけば、急に出血した場合でも機内で輸注可能です。また預けた大きな荷物が到着地ですぐに出てこなかったり、まれに行方不明になることがありますので、そういう意味でも手元に置くほうが安全でしょう。保冷の必要な製剤の場合は、保冷剤や、保冷容器を工夫して、なるべく荷物がかさばらないようにします。例えば、製剤のバイアルのみ保冷対策をするとか、外気になるべく触れないような位置に入れておくとか、割れないようにタオルや衣類でくるむなど配慮しましょう。機内の客室はたいてい温度が一定(22℃前後)に保たれるように設定してありますが、貨物室は温度差がありますし、荷物の取り扱いはかなり乱暴ですので、手荷物にまとめるほうが安全でしょう。使用後の針入れ(コンパクトな容器、小さいタッパーなど)や、駆血帯も忘れずに用意します。シップ薬も数枚用意しておくとよいでしょう。
そしていよいよ出発の日は、出かける前に予防投与をしておくと安心して、スタートできます。
図1 入国審査等で困ったときに出す手紙(例)
1-1 ISEIGAOKA, YAHATANISHI KU, KITAKYUSHU JAPAN, 807-
8555
Phone:+81-93○○○
Dear Sir,
This patient, Mr.○○○○, is suffering from hemophilia A which is a congenital bleeding disorder.
He brings factor(○) concentrates(○○○○), syringes, needles and so on with him for self-infusions.
For medical reasons, I would like to ask you to allow him to carry them with him in your country.
Sincerely yours,
(signature)
AKIRA SHIRAHATA M.D.
Department of Pediatrics, School of Medicine,
University of Occupational and Environmental Health Japan
図2 パスポートに挟む緊急カード(例)(必要事項は患者さん自身が記入しておく)
Emergency Medical
Infomation
(name)
has a
Bleeding Disorder.
Bleeding may not be obvious.
Please evaluate and
treat immediately !
(表)
Bleeding disorder
Severity Level
Recommended treatment product
Drug allergies
※No aspirin or aspirin
containing products.
Other important information
Date of birth
Weight (in Kg)
(裏)