節目のケアシリーズ
《こんな時、どうしたらいい?》幼稚園・学校編
幼稚園に入園できるかどうかが心配
3歳になる重症型血友病A患者の母親です。幼稚園に入園する前に、現在、家庭輸注の練習に週2回通院中です。血友病のことは園側に説明をしなくてはなりませんか?病気のことを言うと断られるのではと心配です。受け入れがスムーズにいくようなアドバイスを下さい。
幼稚園入園に向けて家庭輸注の練習をされていることは、通園するお子さんにとっても、それを見守るご家族にとっても大きなメリットになりますので、がんばりましょう。
病気のことを関係者に説明するかどうかは、最終的には親御さんが決められることですが、私達医療スタッフの立場としては、やはりどこかで説明をしておくべきだと考えます。ご相談のケースでは、家庭輸注ができるようになると、出血への対応が早くなること、運動会や遠足などの日の朝、予め輸注をしておくことにより出血の予防が可能になること、また、定期補充療法をされると出血をほとんど起こさずに園での生活が可能になることなど、強い味方をつけることができます。進行した関節症やその他の障害がない場合、園での活動で制限しなければならないことはほとんどありません。
入園すると、お子さんの環境は、これまで親御さんといつも一緒にいた環境、つまり親の目が行き届いた安全なところから、多くの園児を限られた人数のしかも血友病のことを知らない大人が管理する環境に変わってゆくわけです。出血のコントロールは親御さんがしっかりして下さって安心ですが、転落や外傷など思わぬ事故が起こる可能性は子どもの周りには少なくありません。病気のことを正しく受け止めてもらい、保護してもらい、問題が起きた場合、速やかに連絡してもらうためには園の関係者には正しい情報提供が必要です。
病気のことを伝える場合、ご自身がうまく説明できない時は主治医にご相談されて、園の関係者に病院に来てもらい説明を一緒に受けることもひとつの方法です。園の関係者も主治医や看護師との関係作りができると、抱えていた不安が軽減されると思います。製薬会社から提供されているご家族向けや学校関係者向けの資料を渡されると病気の理解や子どもさんの受け入れに役立つと思います。
また、その施設が正式に入園する前に「お試し保育」などを行っていれば、その制度を活用する方法もあります。園の関係者とお子さんが接する機会を作り、病気の詳しい説明をする前から園で生活していた既成事実を作るのです。入園する前や、入園してから病気の説明をした場合、「お試し期間に特に問題なく過ごせた」という経験が関係者の自信に繋がると思います。
血友病は患者数が少ないこともあり、よく知られていないので、病名を告げると、重症なイメージが先行することもありますが、他の障害やアレルギー疾患、呼吸器疾患などの病気を抱えて通園している子も少なくないため、病児の保育や教育への理解も進んできていると思います。家庭以外の社会で大切なことを学ぶ機会をお子さんに持たせてあげるために、まず親御さんが病気を受け止めてしっかりサポートしてあげましょう。