節目のケアシリーズ
《こんな時、どうしたらいい?》幼稚園・学校編
スキーに行きたい
高校の修学旅行でスキーに行くことになりました。息子は参加したいといっていますが、行かせてもよいのでしょうか?
スキーは、血友病の患者さんにとって「充分な準備をして行えば、利点がリスクを上回るスポーツ」の範疇にはいると言われています。ただし、ここでのスキーとは、クロスカントリースキーを指しますので、急な斜面を降りてくるゲレンデスキーはそれよりリスクが大きくなりそうです。
雪の多い地方ではスキーが日常あたりまえにあり、血友病患者さんにとっても親しまれるスポーツのひとつとの話も聞きます。しかし、そうした環境の患者さんたちでさえ、きめ細かい止血管理のもとに、決して無理をせず、スキーがうまくなるまで指導を受けるというプロセスを踏んでおられるくらいですから、「修学旅行にスキー」というような雪の少ない地方の患者さんはこの部分をなお一層きちんと押さえておく必要があります。
私たちの血友病センターは雪が少ない九州にあるということもあって、最近、高校生の患者さんたちから修学旅行の時期になるとこの相談を受けることが多くなりました。

スキーのように利点とリスクを持ちあわせ、個々の患者さんの状態によっては薦められないスポーツへの参加については、まず、主治医や整形外科医と良く話し合うことが大切なことです。そのことを前提条件として、私たちは、肩、膝、足首に進行した血友病性関節症がなく、自己注射を習得した患者さんには参加できるようにサポートしています。医師やナースと一緒に旅行中の計画表を充分に検討し、予防投与の間隔についての打ち合わせをしたり、準備運動としてのストレッチ運動や休息、シップ薬の携行などについて話し合います。この時、できるだけ学校関係者の方にもはいってもらうようにお願いするとよいでしょう。さらに、なにかあった時のために主治医に行き先で診てもらえる病院の紹介、できれば、紹介状をもらっておくとより安心です。このような準備をしてゆく過程で、患者さんには折りに触れて「今度のスキー旅行は、まず、安全に参加することが目標だよね。カッコ良く滑ろうとか、難しいことに挑戦とかは後でもできることだからね」と話して、患者さんがスキーを安全に体験できるように配慮します。
スキーそのものを体験することは患者さんにとって大きなイベントですが、そこにたどり着くまでの準備や努力も血友病とうまく付き合うための良い勉強になると考えます。