節目のケアシリーズ
《こんな時、どうしたらいい?》幼稚園・学校編
体育の授業
小学校に入学します。
スポーツや体育の授業にはどこまで参加させたらよいでしょうか?
高純度、高濃度の凝固因子製剤が使えるようになってから、血友病の患者さんがスポーツや体育に参加する機会はとても増えてきました。その結果、骨や関節を守るための筋肉が発達して、さらに出血が起こりにくくなるという良い状態が生まれています。凝固因子製剤の予防投与や靴の選択など出血を防ぐ工夫をしてスポーツに積極的に参加することはむしろお勧めしたいことですが、だからといって、お子さんがきらいなスポーツにむりやり参加させる必要はありません。他のことに興味を持っているなら、そのことに熱中させることも大切でしょう。
さて、スポーツの話に戻りますが、大切なことは、出血の部位や程度には個人差があり、また、出血を起こしやすい部位が年齢と共に変化することもあるので、そのことを考えて参加する体育やスポーツの項目を選んでゆくことです。患者さんの出血の特徴や関節の状態をよく知っている主治医や、整形外科あるいは、リハビリテーション科の先生と相談をして、患者さんにふさわしいスポーツを選んでゆきましょう。相談をする時には、できる限り、患者さんご本人も交えてお話をすることが、病気のことを受け入れてゆくためにも大切なことになると思います。この相談の時に、予防投与や定期投与のこと、万が一の事故や怪我をした時の連絡や受診の方法なども話し合っておきましょう。また、学校関係者にも、「血友病の子どもたちを担当される先生方へ」の資料をお渡しするなどして、体育への参加に理解が得られるようにすることも必要です。
学校での体育については、基本的に制限する項目はないと思いますが、インヒビター保有の患者さんや、血友病性関節症のある患者さんは、学年ごとや学期ごとの体育授業の計画内容を担任の先生に教えて頂き、その内容をもとにどの種目に参加するか医療関係者と話し合うのもひとつの方法です。
血友病の患者さんとスポーツの関係は、一般的には、下図のように3段階に分けて考えられています。この他に私たちは、卓球も安全で勧められるスポーツと考えています。ご相談の方は小学校に入学されるとのことですので、当面、問題にならないかと思いますが、同じスポーツ種目でも友達同士で遊びながらするのと部活動(クラブ活動)でするのとは違いがあるかもしれません。参加したいスポーツがどのレベルにあるか迷ったときには主治医や包括医療チームのメンバーに相談してください。言うまでもないことですが、出血しているときには運動は控えて、局所の安静をはかりましょう。それから、もうひとつ、すべての人にあてはまることですが、準備運動(ウォームアップ)やストレッチや、終わったあとのクーリングダウンもお忘れなく。
安全で運動効果のあるスポーツ(勧められるもの) | |||
---|---|---|---|
| |||
無理をしない範囲で、してもよいスポーツ (十分に準備や注意をすれば参加できるもの) | |||
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
| |||
避けた方がよいスポーツ(勧められないもの) | |||
|
|
|
|
|
|
|
|
|
静岡県立こども病院 三間屋 純一 監修
「患者さん指導のためのガイドブック 血友病」より引用