節目のケアシリーズ

《こんな時、どうしたらいい?》幼稚園・学校編

全校の先生への説明

Q

息子(小学4年生の血友病A:重症)の学校の保健の先生から「そろそろ学校の全員の先生に血友病であることを話してよいか」と尋ねられました。家庭輸注もしていて、体育など学校での生活は他の子どもさんと同じようにしています。どう答えたらよいのでしょう?

A

学校関係者へ子どもさんの血友病を受け入れてもらうためには、病気について話すことは必要なことですが、伝えるタイミングや相手などはその子の病状や状況によって少しずつ異なります。一般的には、入学や進級した前後の時期を見計らって、校長先生、学年主任、担任や保健(養護)の先生には保護者の方から病気のことについて話をする機会を作ります。その時、具体的な注意点などをうまく説明できないこともありますので、主治医に相談して、学校関係者が主治医と直接会って話ができるようにすると血友病の子どもさんに対する理解や受け入れもよりうまくいくと思います。

 

1. 全校の先生に伝える目的は?

さて、ご相談の方の場合、全校の教師に説明するといわれています。子どもを預けている側にしてみると、学校側が言うことにはどうしても受け身になりがちで、親御さんも戸惑われるかもしれません。「血友病について学校関係者に話す」ということについて、「誰のために何のために話すのか」ということを中心にもう一度考えてみましょう。血友病であることを話すのは、学校生活の中でその子が出血や出血から引き起こされる二次的な障害を回避して学校生活を安全に、快適に過ごすことが主な目的です。ご相談の方は家庭輸注もされていて、学校では他の生徒と同じように過ごせているわけですから、今のところ学校生活の中で血友病が問題になっているとは考えにくいですね。つまり、全校の先生に話すことについては本人を交えてご家族でどうして欲しいか話しあって決めてよいことではないでしょうか。なぜ、全校の先生に話すことを勧めるのか保健の先生に率直に尋ねてみてもよいでしょう。わが国の血友病の患者さんの数は約4000人です。学校関係者が血友病の子どもに接する機会はほとんどなく、学校の先生方が対応する上で血友病という病名に過敏になったり、不安を抱くのも無理のないことかもしれません。生徒数が極端に少なく、全教師がすべての生徒にかかわるような学校であればその必要はありそうですが、そうでない場合、すべての教師に伝える必要があるのか疑問です。

 

2. 伝えることについて本人の意志は?

そして、もうひとつ大切なことは「そのことについて本人はどう思っているか」ということでしょう。小学4年生のお子さんは自分の病気についてどこまで知っているのでしょうか?重症血友病であれば、おそらく乳幼児期に血友病と診断され、子どもながらに自分の病気(というよりは身体に起こる色々な事象)をその子なりに捉えてきていると思います。自分の病気についてどう思っているのかということの中には、周囲の人々に自分のことがどのように受け止められているのかも含まれる要素ではないでしょうか。自分の病気について学校の先生たちみんなが知っていてくれると安心と思うかもしれませんし、反対に自分の気持ちや意見は聞かれず大人だけで話がどんどん進んでいくことに抵抗を感じているかもしれません。ナースの立場からは血友病である彼がそのことについてどう思って、どうしたいのかも尊重して欲しいと思います。このことは、彼が自分の病気とこれから付き合っていくための1つの重要なステップでもあると思います。

 

ご参考までに、インターネットが使える環境にあるのでしたら、そこからも血友病に関連した多くの情報を入手することができます。特に、大人になられた血友病患者さんご本人の経験談の中には子どもの頃の気持ちや幼い頃の病気についての思いなどが書き込まれていて、勇気づけられたり、参考になったりします。また、ご自身の悩みや相談を書き込むと色々な立場の人がアドバイスをしてくれます。

2. 伝えることについて本人の意志は?