節目のケアシリーズ

《こんな時、どうしたらいい?》乳幼児期編

注射がうまくできないお母さんの悩み

Q

4歳の子どもの母親です。最近家庭輸注を始めるようになりましたが、病院で練習している時のようにうまくできません。6~7回くらい刺す時もあり、落ち込んでしまいます。

A

練習中は上手にできたのに、いざ、家庭へ持ち帰るとなかなかうまくいかない…そんなご相談は当センターでも珍しくありません。病院で練習していた時と家庭で実践する場合とでは環境が変わりますし、気持ちの面でも注射する側もされる側も緊張の度合いが違ってくると思います。ですから、初めのうちはうまくいかないこともあると割り切り、あまり自分を追い込まないようにしましょう。同じように家庭輸注をされているほかのご家族や指導を受けた病院の看護師などに相談することで解決できることもあります。
ご家庭でうまく血管に針を刺せないことが3回程度続く場合は、気持ちを切り替えて病院で輸注してもらうことをお勧めします。そして、うまくいかないことが長く続く場合は、習った病院でもう一度輸注の状態を見てもらうとよいでしょう。案外簡単に原因がわかる場合が多いので、悩み続けたり、がんばり続けたりせず、基本に戻ってみるほうが早道のことがありますよ。
ご参考までに私のこれまでの経験に基づいた、うまく注射ができない場合のチェックポイントについてご紹介します。再度挑戦される前に以下の点を確認してみてください。

 

1. 環境を整えましょう

注射の時のご家庭の環境について一度見回してみてください。私は家庭輸注を指導した後、許される限り、そのご家庭を訪問することにしていますが、その際、どのような状況で輸注をしているかということに注目します(以下は主な注意点)。

  1. 室内の明るさは十分か
  2. 輸注を受ける子どもさんの固定や体勢(腕の高さやテーブルの位置など)に無理がないか
  3. 輸注する人の姿勢や動作に無理がないか
  4. 清潔な操作が可能かどうか
  5. 輸注をする間は集中できるか(ほかの家族の協力を得ることができるようであれば、輸注の準備から注射が終わるまでそのことに集中できるようにします)

これらのうちいづれかを改善するとうまくいく場合があります。本番の日に慌てて整えるのでなく、輸注をしない日にでもシミュレーション的に環境を整えてみてください。改善例をいくつかご紹介すると、「室内灯がやや暗いようであれば、スタンドを用意する」、「輸注をする台に子どもさんの腕を乗せたときには、肩の位置より上がらず、子どもさんにとって安全で可能な範囲できつくない姿勢がとれる状態する」、「必要な道具が手の届くところにある」、「回りを片付けて動きやすいようにしておく」などです。

 

2.技術的な注意点

初めのうちは刺すことだけに気持ちが集中して後のことに気持ちが届かないことがありますので、輸注の準備ができたら、全体の手順を頭の中でイメージして整理すると慌てずにできるのではないかと思います。

  1. 時間に余裕を持って準備をしているか
  2. 血管の走行や出具合をきちんと確認しているか
    準備ができたら、気持ちを落ち着けて血管の走行を十分確認します。血管が出にくい場合は、その部分を温めたり、軽くこすったりして血管をよく 浮き出させるようにします。駆血帯をするときには腕を下げた状態で締めると血管が出やすいですが、あまり強く締めすぎると逆にうっ血して見えにくくなりますし、子どもさんはそのことで痛がり、機嫌を損ねて先の操作に進めなくなったりしますので配慮が必要です。
  3. 針を刺す角度が高すぎないか、針を刺すポイントがずれていないか(多くの場合心持ち手前で刺すほうが失敗しない)、針の挿入が短すぎないか
    いよいよ注射というところでよくある失敗です。

針の刺し方

2.技術的な注意点

4. 駆血帯をはずし忘れて注入していないか

5. 刺した後、注射器を引っ張り針が抜けてしまうこともよく見受けられる失敗ですので下の図のように針と注射器をつなぐチューブをたわませるとよいでしょう。

技術的な注意点