節目のケアシリーズ
《こんな時、どうしたらいい?》乳幼児期編
歩き始めて行動範囲が広がった幼児への心配
1歳2ヵ月の血友病の子どもがいます。よちよち歩きを始め、ぶつかったりしりもちをついたり…ハラハラしながらの毎日です。動き始めると出血が多くなると聞きました。どんなことに気をつければよいのでしょうか?
小さなお子さんの行動を制限するのはなかなか難しいことですし、できる限り伸び伸びと育ててあげたいですね。頭蓋内出血などの重篤な出血を回避することや関節内出血には注意が必要ですが、日常生活でお子さんの行動を特別に制限する必要はないと思います。室内の環境整備、おもちゃの選択、衣類や靴の工夫などで打撲や転倒による出血のリスクを軽減する(表参照)ことはできそうです。それでも出血してしまった場合の応急手当てを以下に簡単にご紹介します。
すり傷・切り傷・皮下出血
ほとんどの場合、製剤の輸注など特別な治療は必要ありませんが、範囲が広い時や皮下出血の中でも顔、特に眼の周囲や呼吸を妨げるような部位、また、採血後に止血が不充分で腫れた場合などは処置が必要になります。判断に困った時にはかかりつけの医師やナースに相談してください。
鼻血・口の中の出血
鼻や口の中はもともと血栓を溶かす働き(線溶活性)が強いので血が止まりにくい場合があります。ガーゼや綿球で圧迫して止まれば問題ありませんが、なかなか止まらない場合には医師やナースに連絡しましょう。製剤の輸注や、トランサミンという飲み薬で止血を促したり、場合によっては耳鼻科での処置や歯科口腔外科で縫合することもあります。
関節内・筋肉内出血
動きがさらに活発になると関節内、筋肉内の出血が増えてきます。関節の中でも特に足首、膝、肘の出血が多くみられます。同じ関節に出血を繰り返すと関節の動きが悪くなり、やがて出血していない時にも痛みがあったり、関節周囲が腫れている状態になってしまいます。「歩く様子がおかしい」、「腕や脚を動かさない」といった様子がある時には患部をよく観察してください。触るといやがったり、太さの左右差や熱感などがみられたら、出血を起している可能性が高いので、かかりつけの医師やナースに連絡しましょう。早く発見して治療することはお子さんを痛みから早く解放してあげることになりますし、出血を最小限度に止めることは血友病性関節症の予防や進行防止につながります。出血があった場合は製剤の輸注と並行して出血の症状が治まるまで安静を保ち、小さいお子さんは嫌がるので難しいかもしれませんが、患部を氷水(氷嚢)や湿布薬で冷やすのが効果的です。
頭蓋内出血
重大な出血ですが、頻繁に起こる出血ではなく、発見が早く、すみやかに適切な治療を受けることで重篤な状態には至らずにすみます。出血が外から見えないので判断がつきにくいのですが、出血を疑わせる症状がある場合には、できるだけ早くかかりつけの医師やナースに連絡をとりましょう。幼児の場合、出血を起してから数日後に嘔吐、意識障害などの症状が現れる場合もありますので、特に「頭を強く打った」、「転落した」などのエピソードがあった場合は、直後に何も症状がなくても数日間は注意深くお子さんの様子を観察して下さい。
表 乳幼児の運動機能や動作と出血の関係;
年月歳 | 子どもの発育の目安 | 出血に関して親が 注意するポイント | 対 策 (九州地区の親御さんからのアドバイス) |
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9~ 10ヵ月 |
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11~ 12ヵ月 |
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13~ 15ヵ月 |
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16~ 18ヵ月 |
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19~ 21ヵ月 |
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22~ 24ヵ月 |
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3年 |
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4年 |
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