節目のケアシリーズ
《こんな時、どうしたらいい?》乳幼児期編
父親の役割の重要性(家庭輸注)
5歳の男の子の父親です。妻がもうすぐ家庭輸注を始めます。 家庭輸注で父親にできる役割や妻の手伝いにはどんなことがありますか?
血友病に限らず、お子さんが病気になった時や、慢性の病気を持つお子さんの世話は一般的にはお母さんの役割のようになっていますが、中にはお父さんが中心になってされているご家庭もあり、最近では増えてきているのも事実でしょう。特に、血友病のように先天性で、生涯つき合っていかなければならない慢性疾患のお子さんやそのご家族にとっては、お父さんはとても大切で特別な役割を担っていると思います。ここでは特にご質問にある家庭輸注における役割についてご紹介します。
家庭注射でのお父さんの役割
ご家族や本人が家庭輸注を希望される場合や、治療上それが必要な場合、血友病の知識や注射の技術について病院で指導を受け、正しくできるようになると家庭輸注が始まります。幼い患者さんへの家庭輸注の担当は今のところお母さんが多いですが、最近では、お父さんが担当されるご家庭も出てくるようになりました。基本的には、そのお子さんと一緒に過ごす時間が多く、出血した時なるべく早く輸注ができるように時間や場所を確保しやすいほうが担当することになると思います。ここではお母さんが輸注の担当になった場合についてお話します。お母さんは、病気の幅広い知識を得るための勉強と、注射の技術、特に、医師の指示を守って清潔に安全に輸注ができるようになるまで練習をします。時間が許せば、お父さんも練習や勉強に一緒に通って、病気についての知識を得たり、見学して、薬の溶解やその他の準備の手伝いができるようになることは大きな助けになるでしょう。練習風景を見ておくと、どんなところで助ければ良いかがわかりますし、そのことが結果的に思いやりとなり、お母さんの不安や緊張を軽減することになるでしょう。慣れないうちは家庭で安全に注射ができるように子どもさんを抱いて支えてあげると、お子さんもお母さんも緊張が柔らぐでしょう。失敗しても、お父さんが傍にいるととても心強いと思います。まずは、がんばっている母子のサポートがお父さんの役割でしょう。
あるお父さんが、自分の妻やお子さんが練習している様子を見て「がんばっている姿にジーンとしました。練習に行ってきたという言葉を聞くだけと、実際の姿を見るのとは違うね」と感慨深げに話されました。痛みを伴う注射は必要でありながら幼い子どもさんにはストレスがかかることですから、そのことを受け止めるお父さんの存在は大きいと思います。
子どもさんが幼いうちは、状況からお母さんが輸注の担当になることが多いですが、お父さんも習っておけば、例えば、弟や妹が生まれてお母さんが赤ちゃんの世話で忙しい時にお父さんが注射をしてあげることができますし、お父さんと二人で過ごす数日がきても慌てずに済みます。