血友病患者さんとご家族のための情報誌「ECHO」

血友病のそこが知りたい
幼少期の患者さんの運動のポイント

イラスト

静岡県立こども病院 血液凝固科 小倉 妙美


一次定期補充療法が広く浸透し、2018年度の報告では重症血友病A患者では86.5%、B患者では80.8%が行っています。定期補充療法の普及により、以前ではあまり選択されなかったスポーツを行っている患者さんもいます。定期補充療法が確立する以前は出血を恐れ、医療者にも安静を指示され、スポーツどころか学校体育でさえいつも見学という患者さんも多かったようですが、血友病患者さんにも定期的な運動は大切です。運動を通してバランスのとれた筋肉を発達させ、それによって関節を保護して出血を減らすことができるからです。加えて、運動・スポーツによって肥満を防止すると膝・足関節等への負担軽減がなされ、大きなベネフィットとなります。

どのスポーツを選ぶかは主治医の先生と本人、ご家族でよく話し合って決めましょう。

幼稚園・保育園

幼稚園・保育園児は、自分の身体能力がどのくらいなのかよくわかっていません。年上のきょうだいや遊び仲間がいると自分もやりたい、自分にもできると思い、同じことをしたがります。走り回るだけでなく、高いところに上がったり、飛び降りたりと好奇心旺盛に動き回り、そこで初めて筋肉内出血や関節内出血を経験することもあるかと思います。最近は習い事でスポーツをする幼稚園・保育園児のお子さんも増えています。

幼稚園・保育園

【1】推奨される運動・スポーツ

幼稚園・保育園の時期は、身体能力が著しく伸びる時期です。体力やバランス感覚など基本的な運動能力の向上を目的にスポーツ(運動)を選択するのがよいかもしれません。水泳は全身をよく動かし、あらゆる筋肉を刺激します。体操教室、ダンスなどは運動能力の発達だけでなく、柔軟性を高められるといわれています。体が柔らかいと日常生活でのけがが減りますし、運動能力も上がります。また、体操は運動神経の基礎となるバランス感覚を養うこともできるので、将来さまざまなスポーツに対応しやすくなります。

【2】避けたほうがよい運動・スポーツ

接触や衝撃が多く、誰にとっても危険の高いスポーツ(高リスク)は、避けるようにしましょう(表1) 。この時期にサッカーを始めるお子さんもいますが、子どもはボールが転がった方に向かって一目散に周りを見ずに動くので衝突などによるけがが多くなりがちです。スポーツを選択するときには見学に行き、周りの子どもたちの様子を見て決めるとよいですね。

【3】運動・スポーツをする上で、出血させないために注意すべきこと

動きやすい服装を心掛け、足首はハイカットの靴で保護しましょう。状況によっては、ヘルメット、膝あて、肘あて、サポーターなど、身体を保護するものをつけるのも方法の一つです。

【4】出血、またはその兆候がみられた場合の対応

痛いところがあるときや、ぶつけたときは隠さずできるだけ早く伝えるようにお子さんと約束しておくことが大切です。出血が疑わしいときには早めに製剤を投与して、RICE(図1)を行いましょう。出血当日の入浴は避け、シャワー程度にしましょう。周りの子が元気に遊びまわっている中で、自分だけじっとしていることは難しいので、その場合は幼稚園・保育園を休むことも必要です。

小学校(低学年、中学年)

自分のやりたいスポーツに目標をもって取り組むことで、定期補充療法を続けるモチベーションが高まりますし、達成感や自信を得ることもできます。また、同じ目標に取り組む友達ができたり、協調性の向上や礼儀などを学ぶ素晴らしい機会にもなると思います。本人がやりたいスポーツに関して、ご家族は頭ごなしに「やっちゃダメ!」というのではなく、主治医とそのスポーツの利点とリスクについてじっくり話し合った上で、お子さんの挑戦を応援し、見守ってあげてください。

小学校(低学年、中学年)

【1】推奨される運動・スポーツ

水泳は全身をよく動かし、あらゆる筋肉を刺激するのでおすすめのスポーツです。本人にやりたいスポーツがある場合は、避けた方が良いスポーツでなければ、定期補充療法を工夫するなどして、一度トライさせてみてはどうでしょうか?禁止をして隠れてやるよりも、ドクターストップがかかったら止めることを条件に一緒に応援してあげてください。

【2】避けたほうがよい運動・スポーツ

接触や衝撃が多く、誰にとっても危険の高いスポーツ(高リスク)は、避けるようにしましょう(表1) 。運動・スポーツの量や種類で出血リスクが大きく変わる場合があります。患者さんの関節の状態によっても変わりますので、始める前に必ず、主治医に相談してください。またリスクが低くても、頭部を強打する可能性のあるスポーツやプレーには留意する必要があります。

【3】運動・スポーツをする上で、出血させないために注意すべきこと

運動前のストレッチは、けがや関節内出血を防ぐために非常に重要です。運動前に十分な準備を行わなかったり、無理な運動をすることは、けがや関節内出血につながる危険がありますので、注意を守って運動しましょう。

【4】出血、またはその兆候がみられた場合の対応

膝や足首などの関節の違和感は、出血の可能性があります。出血が疑わしいときは早めに製剤を投与し、RICE(図1)を行いましょう。また出血後は再出血を防ぐために、一定期間はスポーツを休むようお子さんと約束しておきましょう。長く続けるためには、休む勇気も大切です。

表1 患者さん、ご家族からよくご相談を受ける運動・スポーツ

患者さん、ご家族からよくご相談を受ける運動・スポーツ

この低リスク、中リスク、高リスクはあくまで目安です。特に、*印のスポーツは、運動の量や程度、種類で出血リスクが大きく変わるため、開始に当たっては主治医とよく相談してください。
Playing It Safe, Bleeding disorders, sports and exercise,National Hemophilia Foundation, 2017を参考に作表

図1

図1

PP-JIV-JP-0264-20-06

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