血友病患者さんのための医療福祉ガイドブック

はじめに

先天的出血性素因である血友病の患者さんの中で重症の患者さんは、頭蓋内出血など致死的出血のために、昔は成人期まで生きのびることが困難でした。しかし、クリオ製剤の登場によって、例えば米国の血友病Aの患者さんの寿命(中央値)は1963年に33歳に延長し、さらに濃縮製剤が主流となった1979年には55歳まで延びました。このことは大変喜ばしいことですが、患者さんにとっては高価な凝固因子製剤を一生使い続けなければいけません。凝固因子製剤により肝炎ウイルスやHIVに感染した患者さんにとっては、経済的負担がさらに大きなものになっています。一方、この間、繰り返す関節内出血により関節の動きがじわじわと悪くなり、痛みも加わって日常生活とくに働いて収入を得ることが難しくなっている患者さんが少なくありません。

これに対して、十分とはいえないものの様々な医療助成制度が準備されています。ただ、その仕組みや手続きの方法がわかりにくいというのが患者さんやご家族の実感ではないでしょうか。実は、医師やナースも病気のことについてはそれなりの勉強をしているものの、医療助成制度のことはほとんど知りません。そこで普通は、医事課のような事務職の方へ相談するのですが、血友病の患者さんの数が少ないために、事務の担当者も手続きの方法についてはよく知らないことが多いのです。さらに困ったことに、私達の経験では、届出を受け付ける役所の担当者も詳しく知らないことがあるのが現状です。

2000年に私達の病院のソーシャルワーカーの野田雅美さんにお願いして、血友病および類縁疾患の医療助成制度について小冊子を作成していただきましたが、この度、最新の医療福祉制度の情報をもとに改訂版を発行することにいたしました。なるべくわかりやすい記述を心がけていただきましたが、もし、わからない点がありましたら遠慮なくおたずね下さい。また、医療助成制度の中にはそれぞれの自治体によって少し異なることがありますのでご注意下さい。

この小冊子が、様々な問題を抱えた難病とともに生きる血友病の患者さんにとって少しでもお役に立つことができれば、企画者のひとりとして望外の幸せです。

産業医科大学 名誉教授 白幡聡
産業医科大学病院 北部九州血友病センター ナースコーディネーター 小野織江


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