2010年3月号Volume29Number1 目次へ
定期補充療法相談室 家庭注射を行うご家族のストレス

- 幼い子どもに対して自宅で定期的に注射を行うことは、親にとっても大変なストレスとなります。
うまく注射できない悩みや、忙しい日常生活の中で注射の時間を確保する悩み、父親の協力が得られない悩みなどにどのように対処すればよいのでしょうか?
- A
- 血友病の補充療法は、飲み薬や皮内注射(糖尿病のインシュリン注射など)とは異なり血管内に薬剤を注入する静脈注射という方法です。小児、特に乳幼児の血管は細くまた見えにくいため医師でも難しいことがあり、技術的な面から注射をするご家族のストレスは大きいものと思います。しかし以前(ECHO No.65/2008年11月号)、定期補充療法とその効果についてご紹介しましたように、血友病の子どもさんも定期補充療法をきちんと行うことで、健常な子どもさんとほぼ同じように、多くの楽しいことや喜びを経験できます。
以下にご紹介する対処方法を参考にして、定期補充療法を継続できるよう医師や看護師に相談してみてはいかがでしょう。
バックアップ体制を作る
ご家庭で注射を失敗したら主治医や近くのかかり付け医で注射してもらえるようバックアップ体制を作ることが重要です。そうすることにより、失敗したらどうしようというストレスは多少なりとも軽減され、気持ちが楽になるでしょう。また、ご家族の体調不良やスランプで注射の失敗が続くような時は、しばらく通院して補充療法を継続し、家庭注射を再開できるようになるまで無理をしないことです。注射に自信をなくしたり不安になった時は再度練習をすることもよいと思います。家庭注射を開始したからといって必ず家庭でしなくてはいけないことはありません。思いつめることなく悩みを医師、看護師に伝えて下さい。
家庭注射の練習をできる限りご両親で受けて頂くことをお勧めします。手技を習得して頂くことはもちろんですが、いろいろな悩みが生じた時に二人で相談し解決できるとお母さんのストレスが少なくてすみます。
中心静脈カテーテルの利用
手や足の血管に針を刺すことがどうしても困難な場合には、血管から注射ができるようになるまでの一定期間のみ中心静脈カテーテルを挿入する方法もあります。血管が見えない、失敗したらどうしようなどのストレスが軽減され確実に補充療法が行えます。カテーテルの種類、利点や欠点について(参考:ECHO No.67/2009年7 月号)主治医に相談してみて下さい。
訪問看護の利用
血友病の家庭注射において、主治医や担当看護師が家庭での状況確認や支援ができない場合に訪問看護師にサポートをお願いすることもできます。この制度は小児だけでなく成人でも利用可能で、家庭注射施行時の不安を和らげてくれると思います。
例えば次のようなことをお願いできます。
- 注射およびその準備や介助
- 育児相談
- リハビリテーションの援助
- 日常生活における問題点の相談や援助
以下に訪問看護を利用してご家庭での定期補充療法を継続できた患者さんの例をご紹介します。
家庭注射の指導を受け、注射成功率は80%~90%で導入となった患者さんの例
2歳の患者さんとご両親の3 人暮らし、ご両親は共働きでお父さんは早朝に出勤し帰宅も夜遅いため休日以外はご両親での補充療法は難しい。しかしまだお母さん一人による注射は成功したことがなく、失敗の恐れがある状況でした。
定期補充療法は基本的に朝に行うことが望ましいのですが、共働きということもあり朝の注射は難しいとのことでした。そこで夕方の訪問看護を利用して注射の介助をお願いしました。お母さんが失敗した際には代わりに訪問看護師に注射をしてもらうよう依頼しました。
また、第一子ということもあり子育ての相談も依頼しました。
その結果、医師の指示どおりの定期補充療法を継続でき、通常の保育園での生活が送れるようになりました。2歳3ヶ月頃お母さんと患児の2 人だけで、しかも朝に注射ができるようになりました。
家庭注射の指導を受け、導入となった遠方(通院約3 時間)の患者さんの例
2歳の患者さん、お姉さん2人とご両親の5人家族。遠方ということもあり、家庭注射導入後もお母さんの不安が大きく、注射の失敗が続いたため訪問看護師を依頼することになりました。病院の医師や看護師が訪問看護師と密に連絡を取り合いながら家庭注射を行いました。
その結果、お母さん1 人による注射ができるようになり、訪問看護師にはお母さんが注射をしているところに立ち会ってもらい、何かトラブルが生じた時にアドバイスをしてもらっています。
最後に

ご家庭での注射がうまく行かず悩んでいる方も、このようにちょっとした工夫やさまざまな方法で定期補充療法を継続できます。
お一人、ご家族だけで悩まずにぜひ医療施設(主治医・看護師)にご相談下さい。
聖マリアンナ医科大学病院看護部師 長吉川 喜美枝先生
聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院小児科 教授 瀧 正志先生