2009年11月号Volume28Number3 目次へ
定期補充療法相談室 幼い患者さんの精神的ストレス

- 注射を嫌がりその度ごとに泣き叫ぶ乳幼児の子ども(血友病患者)に対して、
どのように接していけばよいのでしょうか?
- A
- 子どもにとって注射は抑制されたり、痛かったりなど負のイメージがある嫌な行為です。
しかし、現在の血友病の治療法は不足する凝固因子を静脈注射する補充療法しかありませんので、お子さんの苦痛を軽減するための配慮と、注射をする理由をご家族とそれぞれの年齢に応じてお子さんに分かってもらうことが大切です。
1.注射を始める前に
なぜ注射が必要であるかを理解しましょう。
家庭注射療法を開始する時はその目的と意義を十分に理解することが最初の一歩です。
1)まず、ご家族がよく理解する必要があります。
ご家族が十分納得されないままで始めた場合、子どもさんに泣かれたり、嫌がられたりすると疑問や迷いが生じてしまい、うまくいきません。
2)お子さんになぜ注射をしなくてはいけないかを説明しましょう。
それぞれの年齢に応じた説明が必要です。完全には理解できないかもしれませんが、お子さんの年齢に応じた教材など(図1、2)も活用してできるかぎりわかりやすく説明しましょう。
幼児期:
- 出血時補充療法
…痛いところが治るように注射をします。
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定期補充療法
…みんなと一緒に遊べるように注射をします。けがをしないためです。
学童期:
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出血時補充療法
…出血した時に製剤を注射することで出血が止まります。
また、関節内出血を適切に治療しないと将来関節のはたらきが悪くなります。
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定期補充療法
…不足している、出血を止める因子を定期的に製剤として注射することで止血しやすくなり、スポーツなども行えます。また、出血を防ぐことにより大人になっても関節のはたらきを保持します。
2.注射時の苦痛を和らげるためのポイント
実施者はあわてずじっくりと行うことが必要ですが、抑えられたり我慢しているお子さんにとってはあまり長いと嫌になってしまうので注意しましょう。
よく理解して始めても途中で疑問や迷いなどが生じることがありますが、その都度医師や看護師に相談し、小さな問題でもひとりで抱え込まないようにしましょう。
乳幼児期:
- シールタイプの皮膚麻酔薬があります。注射する30分ぐらい前に注射部位に貼ると針を刺した時の痛みが緩和されます。
ただし、医療機関によっては常備していなかったり、麻酔薬に対するアレルギーなど使用できない場合もありますので、主治医にご相談下さい。
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お子さんが動いてうまく針を刺せない場合は、きちんと固定し、抑えましょう。バスタオルなどを使用してしっかり抑える(図3)とよいでしょう。一見かわいそうに思われるかもしれませんが、1回で注射を済ませることはお子さんにとっても苦痛を和らげることにつながります。介助者と注射実施者が協力することが必要です。
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注射中にお子さんに話しかける、ビデオやテレビなどを見せながら注射する方法もお子さんの気を紛らわせるのに有効です。
学童期:
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介助者や抑制は必要なくなってきますが、注射をすることへの疑問などが生じる頃です。病気のこと、補充療法の必要性などを改めて話しましょう。
3.注射終了後
上手に注射をできたお子さんを抱きしめて褒めてあげましょう。特に、泣かずにできた時は、大げさ
に褒めてあげるとお子さんの自信につながります。
4.最後に:ご家族の精神ストレスへの対処法
ご家族の気持ちが不安定な時に注射をしても、失敗することが多いですし、失敗が続くとお子さんも嫌になってしまうことがありますので、遠慮なく医療機関に相談するなど気持ちの切り替えが大切です。
1)最初は「子どもに注射をすることで嫌われるのではないか」と心配されるご家族もおられますが、当院でアンケートを実施した結果では、みなさんが子どもに嫌われたなどその後の成長過程における問題はないとの回答でした。
2)注射をするご家族の方が病気になったり、気分が優れず注射の自信がないなど、注射ができない時は、無理に家庭で行わず、休んで気分転換をして再開することもよいでしょう。その間、定期補充療法の場合は病院に行って注射してもらい、出血時は緊急に注射をしてもらえるような体制を主治医に相談しましょう。
聖マリアンナ医科大学病院看護部師 長吉川 喜美枝先生
聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院小児科 教授 瀧 正志先生