2009年11月号Volume28Number3 目次へ
日本海総合病院
内科 部長 齊藤宗一先生
プロフィール
1981年山形大学医学部卒、同年第3内科入局。
1989年より5年間の三友堂病院内科を経て、1993年より山形県立日本海総合病院内科に勤務。
2008年、市立酒田病院との合併により地方独立行政法人山形県・酒田市病院機構日本海総合病院となり、
2008年より同病院内科部長。
専門は、血液凝固。
患者さんとの交流を大切に
庄内地方で数少ない血液内科で凝固を専門とする齊藤先生は、生まれも育ちも山形県。富山医科薬科大学で研究をしたわずか1年だけが県外での生活とのことで、山形県内の血友病患者さんとも古くからのお付き合いがあります。
しかし、最初に血友病患者さんに出会ったのは病院内ではなく、血友病の患者会だったという経歴の持ち主です。
「医局に入局して早々に血友病患者会の総会が開催され、勉強会やサマーキャンプなどのお手伝いをするようになったのが、患者さんとふれあいをもったきっかけです」。齊藤先生はそのサマーキャンプや勉強会で、当時、導入され始めたばかりの自己注射を患者さんとともに体得したとのことです。当時の患者会の参加者は、小児科の患者さんが中心で、ご家族を合わせて約10人、医療関係者、製薬会社などスタッフを含めると20人程度で、月に1度勉強会を開き情報交換をするなど、とても活発に活動していました。
初めて主治医として血友病診療に携わったのは、1980年代半ばで、HIV感染症を合併した患者さんでした。その後、数人の患者さんの主治医となりましたが、ほとんどが既に患者会で顔なじみになっていた患者さんで、久しぶりの再会といった感じだったそうです。
その後、三友堂病院の一般内科へ赴任したために、主治医として血友病診療に携わることが少なくなりましたが、齊藤先生はできる限り患者会へ参加するなど継続した交流を大切にしています。
大変活発に活動していた患者会でしたが、情報交換会などの回数が自然に減っていきました。
病院を離れた患者さんとの交流
血友病だけではありませんが、最近も齊藤先生は、仙台を中心に活動している患者さんの集まりに参加しています。夏休みを利用して勉強会を行なったり、秋田や八幡平へ出かけて行って、交流会にも参加しています。
その他にも数人の患者さんのグループから、「温泉旅行をしたいので、安全確保のために同行の医師として参加して欲しい」などの依頼があった場合なども快く引き受けています。
「医者付きの温泉旅行です。こんな安心なことはありませんね。でも、私自身も旅行や患者さんとの交流が楽しいので、全く苦になりません。診療しているときとは違った患者さんの普段の姿を拝見することができるのは貴重な経験です。昔、お付き合いした患者会の活動が少なくなってしまいましたが、また機会があったらお会いしたいと思っています」と、齊藤先生は病院を離れて多くの患者さんとつながりを持つことを大切にしています。
日本海総合病院における血友病診療の現状
現在、当院を受診している患者さんは2人で、ともに重症型です。一人は近隣の開業医より紹介があり、もう1人は合併前の市立酒田病院小児科から転科してきました。1人の患者さんは定期補充療法、もう1人の患者さんは出血時補充療法で止血管理をしています。
若い患者さんは小児科ですでに自己注射の導入が済んでいましたが、もう1人の患者さんは当初、医療機関を受診して輸注を行っているとのことで、当院で自己注射を導入しました。
「患者さんに最初、自己注射に挑戦してみる気はないかと尋ねると、少し躊躇しておられたようですが、自己注射を覚えると、来院してその都度補充するより痛みを我慢する時間も短くなるし、早く回復しますよと説明すると、教育入院を承諾されました」。
1週間の教育入院で、看護師などスタッフの協力を得て比較的短期間で導入することができました。
自己注射の導入前は、関節内出血などで痛みが出ても、随分長い間我慢して、それでも我慢できなくなって医療機関を受診し、製剤を補充していたという状況だったようです。
「今までの習慣なのでしょう。自己注射を導入した当初は、あまり我慢しないで早目に補充してくださいと指導しても、患者さんからは、痛くなってから3日間我慢して、それからやっと補充したというような話を聞きました。正しい補充療法を理解してもらうために、受診のたびに患者さんにお話ししたので、今では早目に輸注ができるようになったようです」と齊藤先生。
現在も歯肉出血や関節内出血などのため月に4~5回程度、製剤を補充しています。また、関節障害がありますが、早めの補充が功を奏して、現在は治療のために整形外科を受診するほどではありません。歯肉出血については近隣の開業医を受診しています。
若い患者さんは、幸い特に目立った合併症もなく、適切に管理できていますが、仕事が忙しいため、本人の受診が少ないことが齊藤先生の唯一の懸念です。「やはり年に1度は血液検査などして、状況を聞かせてほしい」と、元気な患者さんでも心配な様子です。

院内の連携
齊藤先生には、血友病性関節症の人工膝関節置換術を当院の整形外科と連携をとりながら行った経験があります。
止血管理を齊藤先生が受け持つ以外に、手術にも立ち合ったとのこと。
「手術に立ち会っただけでしたが、手術着やエアーシャワーなど無菌処理を十分に行い、とても厳重な格好をして手術室に入りました」との話からは、患者さん思いの齊藤先生らしさがうかがえます。
術後の止血管理も齊藤先生が担当し、約3週間にわたる入院中には、毎日欠かさず病棟に脚を運び、患者さんの様子を見に行ったとのことです。もちろん、退院後のリハビリ等も当院で対応しました。この経験は整形外科にとっても初めてのことでしたが、齊藤先生が患者さんと整形外科のスタッフとの間に密接に入ることで、大変スムーズな連携が取れました。
そのほかにも、患者さんが自然気胸(肺に穴が開き、空気が漏れて肺が圧迫される病気)を発症したことがあり、そのときには、呼吸器科と連携をとって止血管理をしながら治療を行いました。
庄内ヘモフィリア勉強会でネットワーク強化を図る
庄内ヘモフィリア勉強会は、今まで4回実施しています。当面の目的は、特に看護師などスタッフへの情報と勉強の場を提供することですが、当院では患者さんの数が少なく、また患者さんが成人ですので、看護師の関わる場面はそれほど多くありません。そのため今のところ当勉強会へは齊藤先生が、1人で参加していますが、今後このような医療ネットワークをきっかけに地元で受診する患者さんの数が増えると当院の看護師にも参加して欲しいと考えています。
「庄内地方では多くの開業医の先生方が1人、2人の患者さんを長い間診療していることが少なくありません。当勉強会には開業医の先生方にも参加していただいています。私自身も、近隣の診療所へ昼休みを利用して血友病の説明に行った経験があり、当勉強会には情報提供側として参加しています。当地域内に患者さんが少ないので、実際に紹介が頻繁に行われているという状況ではありませんが、普段から勉強会で顔つなぎをしておくと、電話でもメールでも相談がしやすくなりますから、皆さんに大いに利用して頂きたいと思っています」と齊藤先生。庄内地方の血友病診療に対していつでも気軽に相談に乗り、親身になって取り組んでいます。